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天寿会献体20年

 

金沢医科大学天寿会

 

金沢医科大学が昭和47年に創立し24年余を経た今、天寿会は昭和51年に結成されて20年となりました。
当初、「これからは入会する人は男も女もあることだから、女の役員も必要ではないか」との初代会長のお言葉で、会長は石川県能登半島の穴水、副会長は富山県の高岡にいらした関係で、丁度金沢市内に住んでいた私が副会長の1人に加えられるという事になった次第です。
その頃は献体という事についてまだPRも充分でなく、皆様に分かっていただくよう機会を作ってお話しをする事が仕事でした。しかし所謂新設私立医科大学には、名門金沢大学医学部のような献体の基盤がなく、会員増は困難の連続でした。それでも当時の会長は、「決してすすめるな自然増で」と強調され、今日までその方針を受け継いでまいりました。
全連の会に出席すると、他の新設大学の方が増えつつある会員数を言われる度に私達はほんとうに淋しい思いをしました。せめて登録数を1,000人にしたいと思っていました。
月日が過ぎまして平成2年に私が会長になりました。先日の役員会で私はやっぱり会員の増えない事にこだわる発言をしました。その時に理事のHさんから、「全連の会に出席しても会員の数が多いとか増えないとかいつも数が話題になるが、自分はそんな事は問題でないと思う。会報天寿に毎年掲載される学生感想“解剖学実習を終えて”という文を読んで、毎年の如く新しい感激を覚える。献体者は皆神様のように美しい、尊い、それでよいので数にこだわる事はない」とご意見を頂戴しました。
私も改めて会報天寿を読みなおしました。学生さんが感動していて下さる。思い当たります。昨秋天寿会総会の折に、在学生の方から天寿会員に面会して話しを聞きたいとの申出があり、役員がお目にかかりました。
学生の方から、実習で御遺体には接しているが、生前の会員の方のお気持をきかせてほしいと申されました。私達はそれぞれに率直に最後のボランティアとして医学のお役に立ちたいだけだと申しました。学生さんはだまって聞いているだけでした。お別れに握手をしました。
その掌はじっとり汗ばんでいました。こんなに真剣に思っていらっしゃるのかと感激しました。この思いに應えられればいいのです。
私達役員は献体者募集人ではない、あくまでも1人の献体者である。それでいいではないか。私も考えをきりかえて割り切りましょう。
20年間の延登録会員数は平成8年6月現在で701名で、現存会員は404名です。数は少なくともお互いに助け合って、少ないからこそ出来る美しい会にしようと思い直しております。
(会長 加藤志づ)

 

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